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てんがいこどく

社会不適合者だけど頑張って働いてます

【書評】怪物がめざめる夜【伊集院光推薦本】

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伊集院光が絶賛していたので読んでみた。
この話って、ニッポン放送時代の伊集院や、彼が作り出した架空のアイドル「芳賀ゆい」の顛末と似たような話だよね。
そりゃあ、彼が絶賛するはずである。

この小説で書かれているような「ラジオの深夜放送で人気の毒舌パーソナリティーが若者の教祖になり、ファンが暴徒化する」という話は現代でも充分ありえることだ。
まぁ今はラジオというよりもSNSという感じだけれど。
リスナーの心の機微を見事に文章化している辺り、さすがは元放送作家で今なお深夜ラジオの現役リスナーである小林信彦だと感心した。
「あれだけ酷い目にあわされても芸人に対する未練を断ち切れない」というオチも業が深くて面白い。

というわけで決してつまらない作品ではないんだけど、この小説には致命的な欠点がある。
ミスターJのセンスが古臭すぎるんだよ
とりわけギャグが古臭くってさ、90年代前半という時代設定に無理を感じる。
90年代前半と言えば、電気グルーヴがANNで大暴れしてた時代だよ?
当時の若者ラジオリスナー(ビニールおっぱいとか)が、ミスターJの自称毒舌トークなんぞに熱狂するとは到底思えないのだ。
小説の中でやってるようなノリは、大目に見て80年代までのものだろう。

小林信彦は演芸評論の名手ではあるんだろうが、小説には向いていないのかもな。
創作というより、たんなる「自分語り」なんだもの。
主人公(というか小林信彦本人)には「他人の芸を見極める特殊能力」があるそうなんだが、そんなの「売れる前から目をつけてました」とか言ってるドルヲタとそう変わらんよ。

そもそも、小林の批評眼の視力がそれほど高いとも思えない。
彼は「下品な関西弁だから」という理由で全盛期のダウンタウンに見向きもしなかった。
これは致命傷だろう。


その代わり、爆笑問題上杉隆を絶賛するのである。
彼好みの毒舌であり、「真実を述べる人」だから(私はそうは思わないけど)。
爆問は良い面もあるが、捏造が多い上杉隆の言ってることを鵜呑みにしている小林はヤバイ。
「自分で調査したり裏を取ったりしていない」ってことですから。
その点をロッキングオン松村雄策ビートルズ論争」で指摘されたはずなのにね。

 

まぁ、わかりやすい「過激ぶりっこ」に心奪われてしまうあたりが、ミスターJに踊らされる一般大衆を小林信彦自ら体現しているみたいで、微笑ましくはある。

【評価】60点
【作者】小林信彦